2014年3月21日金曜日

違憲三段階審査、初めに自由ありき、自然権

ドイツの憲法では、「公共の福祉」等のあいまいな例外ではなく、個別具体的な法律名によってのみ基本権は制限される。

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三段階審査とは、ドイツの憲法裁判で実践されている手法です。この考え方は、自由が原則であり、制限は例外的にのみ許される(憲法上正当化できない限り、自由の制約は違憲である)という理解から、①ある憲法上の権利が何を保障するのか(保護領域)②法律及び国家の具体的措置が保護領域に制約を加えているのか(制限)③制限は憲法上正当化しうるのかという順で審査することを求めるものです。保護領域→制限→正当化と進むことから三段階審査と呼ばれます。三段階審査では、抽象的・観念的な法的構成で終わるのではなく、事案の特殊性を取り込んだ具体的な法的構成が求められます。

第3段階の審査は、〔法令違憲のレベルでいえば〕人権を制限する法律、つまり憲法違反の疑いのある法律に対して、その疑いを晴らすだけの正当性があるかどうかを審査することになります。ドイツの教科書では、次のようなハードルをクリアしなければならないといっています。

1法律が正規の立法手続を経て有効に成立していること。
2人権に法律の留保がある場合とない場合とを区別して、
  a)特別の留保がある場合は特別の要件を満たしていなければならない。
  b)法律の留保がない場合は他の人権などの憲法上の利益を実現するためでなければ介入(=制限)は正当化できない。
 〔ふつうの法律の留保がある場合は〕
3法律の留保が認められるとしても、それは議会の留保の要請が満たされなければならない(他の機関への白紙委任は認められない)。役人への全権委任は許されない。
4介入(=制限)が比例原則に合致していること。
5制度的保障を伴う人権については、制度を破壊しないこと。
6介入(=制限)の内容が人権の本質的内容に及ばないこと(核心部分への介入(=制限)でないこと)。
7法律の一般性が守られていること。個別事件に対処することを目的とする法律(=処分的法律)であってはならない。
8法律の留保が認められている人権については、法律においてどの人権を制限するかを挙示しなければならない。
9法律が構成要件と法効果において明白・明確であること(明確性の要件)。
10法律がその他の憲法規定と矛盾・衝突していないこと。

すべてのハードルをクリアしなければなりません。いずれかのハードルで躓けば違憲となります。

※ドイツにおいては今日でも法律の留保というのは非常に重要な意味をもっています。法律の留保があるかないかでは正当化の難易度(審査の厳格度)が変わってきます。日本国憲法の保障する自由権では法律の留保を伴うものはむしろ例外であるので、この基準を忠実に運用しようとすると非常に厳しいものになります。したがって、日本の人権もドイツの基本権と同様に法律による制限が認められることを前提としないと使えないでしょう。しかし、このような違いに目をつぶったとしても、最高裁の判例と比べれば、より厳格な審査が行われる可能性は大きいでしょう。

※特別の留保というのはあまり聞いたことがないかもしれません。ドイツ基本法では、表現の自由は無制約なものではなく、青少年の保護や個人の名誉保護等を理由に制限できると規定されています(5条2項)。このような特定目的のために自由を制限することは憲法上許されるが、そのほかの理由では法律をもってしても制限することはできないというのが特別の留保の意義です。日本の場合、憲法に何の留保も付されていないのに、青少年保護条例等で表現の自由が規制されています。しかもそれらがすべて最高裁によって合憲とされています。


Artikel 5 [Meinungsfreiheit]

(1) Jeder hat das Recht, seine Meinung in Wort, Schrift und Bild frei zu äußern und zu verbreiten und sich aus allgemein zugänglichen Quellen ungehindert zu unterrichten. Die Pressefreiheit und die Freiheit der Berichterstattung durch Rundfunk und Film werden gewährleistet. Eine Zensur findet nicht statt.
(2) Diese Rechte finden ihre Schranken in den Vorschriften der allgemeinen Gesetze, den gesetzlichen Bestimmungen zum Schutze der Jugend und in dem Recht der persönlichen Ehre.
(3) Kunst und Wissenschaft, Forschung und Lehre sind frei. Die Freiheit der Lehre entbindet nicht von der Treue zur Verfassung.

第5条 [表現の自由]

(1) 何人も、言語、文書および図画をもって、その意見を自由に発表し、および流布し、ならびに一般に入手できる情報源から妨げられることなく知る権利を有する。出版の自由ならびに放送および放映の自由は、保障される。検閲は、行わない。
(2) これらの権利は、一般法律の規定、少年保護のための法律上の規定および個人的名誉権によって、制限される。
(3) 芸術および学問ならびに研究および教授は、自由である。教授の自由は、憲法に対する忠誠を免除しない。



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