ストーン判事のカロリーヌ判決、脚注4
① 民主主義の政治過程を制約する法律については,裁判所はその合憲性を厳格に審査しなければならない。政治過程を制約する法律とは,選挙権の制限,情報を広めることの制限,政治団体に対する干渉,平和的集会の禁止などの法律を指す。
② 憲法が掲げる基本的人権を制約する法律については,合憲性の推定が働かず,裁判所はその合憲性を厳格に審査しなければならない。
③ 特に,特定の宗教的,人種的,民族的少数者に向けられた法律,すなわち個々の孤立した少数者の人権を制約するような法律については,裁判所はその合憲性を厳格に審査しなければならない。
更に要約しますに選挙権,表現・集会・結社の自由など民主主義の政治過程に不可欠な権利を制約する法律や,基本的人権,特に宗教的,人種的,民族的少数者の人権を制約する法律の合憲性については,裁判所は厳格に審査すべきである,というものです。これらの権利が問題になるときは,まさに裁判所の出番である,司法が積極的に活動すべきであると言っているのです。
泉徳治最高裁判事の判決
「民主主義国家にあっては,司法は,国民の代表たる議会の行った立法の相当性に立ち入って審査すべきではなく,また,違憲判断も慎重であるべきである。 立法が賢明であるか否かは,国民が投票所における投票によって審査すべきことであり,不賢明な立法の是正は,投票と民主政の過程にゆだねるべきである。 しかし,それは,選挙制度を中心とする民主主義のシステムが正常に機能し,全国民が投票所で正当に意思を表明することができ,その意思が議会に正当に反映される仕組みになっているということが前提となっている。 選挙制度が国民の声を議会に届けるシステムとして正当に構築され,議会が国民代表機関として正当に構成されているということが大前提となって,議会には広範な立法裁量権が与えられ,その裁量権行使の是非の審査は投票と民主政の過程にゆだねるということができるのである。 選挙制度の構築,特に投票価値についてまで議会が広範な裁量権を有することになっては,議会に対する立法裁量付与の大前提が崩れることになるのであるこ本件の東京都選挙区の選挙人の立場に即していえば,立法裁量論に依拠する場合.他の地域の選挙人に比して低い投票価値しか与えられていないことの是正を.低い投票価値の故にその声が一部しか反映されることのない国会の広範な裁量にゆだねなければならないことになるが,それが不合理であることは明らかというべきであろう。 民主主義のシステムが正常に機能しているかどうか、国民の意思を正確に議会に届ける流れの中に障害物がないかどうかを審査しシステムの中の障害物を取り除くことは,司法の役割である。 議員定数配分の問題は,司法が憲法理念に照らして厳格に審査することが必要であると考える。」
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