2014年2月20日木曜日

表現の自由の制限は、法律によらなければならない

213日付の被告書面が14日に届いたので、218日に書面提出しました。

市民的及び政治的権利に関する國際規約 第19
1 すべての者は、干渉されることなく意見を持つ権利を有する。
2 すべての者は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、國境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。
3 2の権利の行使には、特別の義務及び責任を伴う。したがって、この権利の行使については、一定の制限を課すことができる。ただし、その制限は、法律によって定められ、かつ、次の目的のために必要とされるものに限る
(a) 他の者の権利又は信用の尊重
(b) 國の安全、公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護

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  平成26218
平成 25年(ワ)第 130号 表現の自由侵害事件
原告 岷民蟬
被告 日向市
宮崎地方裁判所延岡支部 民事合議係
原告  岷民蟬

弁 論 書


平成26213日付の被告準備書面1について、弁論する。

1.    「公用物」について:
「公用」とは何か? 特定の一部の者のためのものではない、原告を含む國民全体のための物であることを示す。全体の奉仕者である公務員、日向市長の恣意的な使用禁止が許されず、法律条例よって管理されなければならない物である。日向市長は、公共の利益が最大化されるように、施設を管理する義務を負っている。

平成254月の「日向市行政評価の概要 ~ 市民との協働により行政サービス永続的向上を ~4頁によれば、「市民情報室、図書館、各地区公民館」 が同種の機能を有する施設として列記されている。市民が日常的に、常時利用することを求められている施設である。市民が利用する自由、権理のある施設である。情報公開条例に基づき、文書開示の場所として指定されたのが市民情報室であり、開示請求者はその開示場所の環境を最大限活用する自由、権理があることは当然である。憲法13条、個人の尊重、自由及び幸福追求権に裏付けられる。人は生まれながらにして自由である。平等である。使用する権理がなければ、原告はその場所を訪問することはない。使用する権理があるから、市民情報室を訪問したのである。被告が市民情報室を公文書の開示場所として指定することにより、当然、原告が市民情報室を使用する権理が発生している。コンセントは市民情報室内に付属するものである。コンセントは必要に応じて使用するために存在するのであり、使用禁止にするために税金を投入して整備されているのではない。法律条例の規定によらずに使用禁止とすることは、職権乱用である。公共の利益に反する。

行政文書閲覧権は、原告の憲法上の権理、國民主権、表現の自由、參政権、幸福追求権に基づくものである。日向市情報公開条例に基づくものである。閲覧に伴う事務、電子的メモのためにパソコンの使用を伴うことは自然であり、コンセントを使用することも自然である。高度情報ネットワーク社会形成基本法の趣旨からも至極当然の行為である。日向市職員も同じ建物内でパソコンを使用し、電源を使用している。その自然な行為を禁止するためには条例の規定によらなければならない。地方自治法142項、憲法31条、市民的政治的権利に関する國際規約第193の要求するところである。民主的な法治國家における自由の制限は、個別具体的でなければならない。公務員に対してのみ電源の使用を可能とし、公務員以外の國民に対しては使用を禁止することは不当な差別にあたり、憲法14条違反である。

メモ行為、電子的メモ行為は、正確な認識、記憶を得るための必要不可欠の手段であり、憲法21条に基づく行政文書の内容を知る権利は、五感の作用によりその内容を認識することにとどまらず、メモ行為によって認識する自由を必要不可欠のものとして内包している。

電子的メモをとることは、憲法上の國民主権、表現の自由、參政権、幸福追求権の行使のために必要とされる行為である。そのために電源の使用が必要であり、電源供給源としてのコンセントが常備されているのであるから、それを使用することを妨げることのできる理由はない。禁止するための法的根拠がない。
電源コンセントは、本来の目的として、必要になった時に使用するために備え付けられているのであり、使用禁止にするために備え付けられているのではない。
電源コンセント(6個以上)は、なぜそこに存在するのか? 必要な時に使用するためである。公務員であるか否か、身分によって差別されない使用権である。
市民情報室の本来の存在目的は何か? 情報公開を促進することである。その目的のための電源の使用であるから禁止にすることはできない。

2.    市民的政治的権理に関する國際規約第19 (表現の自由)には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、國境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む、と規定されている。伝えたい情報を、原本にできるだけ近い状態で、國境にかかわりなく、伝えるためにスキャナーを使用する方法を選択し、そのために必要に応じて備え付けられている公共の電源コンセントを使用することを選択することは、個人の選択の自由の範囲内である。合理性がある。それを妨害することは、表現の自由、選択の自由の侵害となる。
3.    國民が公文書の電子的メモをとるために、電源コンセントを使用することを禁止することは、高度情報ネットワーク社会形成基本法の趣旨に反することである。高度情報ネットワーク社会形成基本法第20条、21条違反である。
4.    憲法第31 (適正手続保障due process of law) に反する恣意的な自由の制限である。地方自治法第14 条の自由制限法定主義に反する、恣意的な自由の制限である。日向市情報公開条例には、電源コンセントの使用を制限する規定はない。民主的な法治國家では当然の考え方である。
5.    表現の自由(市民的政治的権理に関する國際規約第19 条、憲法21)は、民主主義社会の根幹をなしている自由権であるから、それを制限することとなる電源使用禁止措置が正化されるためには、厳格な違憲審査基準を越えなければならない。本件では十分な理由があるとはいえない。そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならない
6.    憲法第212項違反である。検閲に該当する。原告は、開示された公文書を電子文書化し、日向市民のみならず、全國民がインターネットで閲覧できるようにすることを望んでいるが、それを困難化するものである。公共の利益に反する妨害である。多くの國民が同一の公文書のための情報公開請求書を繰返し作成し、提出し、日向市役所まで赴き、閲覧する等の勞を省き、公益に資するための行為を妨害するものである。
7.    憲法第14条、市民的政治的権理に関する國際規約第26 (平等保護原則)に違反する。市民情報室を含む同じ建物内で公務員はパソコンを使用している。電源コンセントを使用している。國民が同じようにパソコンを使用することを禁止することは不当な差別に当たる。表現の自由の実現のために必要に応じてパソコンを使用し、電源コンセントを使用することを禁止することは、不当な差別にあたる。
8.    憲法第13条違反である。原告の自由、メモの方法の選択の自由、メモの際に電源の使用を伴う方法の選択の自由を妨げることのできる、合理的な理由はない。
9.    パソコンのための電源コンセントが備わっているにも関わらず、それを使用させない、ということは信義則違反である。水道が備わっているにも関わらず、それを使用させない、ということは信義則違反であることと同様である。すぐ近くで公務員が電源コンセントにつないだパソコンを使用しているのに、公務員ではない國民が使用できないのは不当である。信義則違反は、個人の尊厳を侵害するものであり、憲法13条違反である。
10. 例えば、宮崎県立図書館等の公共図書館内において、パソコンを使用できる場所がある場合、電源コンセントを使用できることは一般的である。インターネット用のLANケーブルを接続できる場合もある。物理的に接続しなくても、無線LANに接続できる場合もある。このような公共施設内において、特段のやむおえない理由なく、電源の使用を禁止するというような恣意的な運営は許されない。昨日まで使用できた電源を今日から使用禁止にするということは、特別な合理的な理由がない限り許されないことである。日向市の市民情報室においても、特段の理由がない限り電源の使用を禁止することは許されない。公共の利益に反する。
11. 被告は112日付当事者照会に対して、22日までの回答期限に回答しなかった。信義則違反である。213日付の準備書面114日に受領したが、当事者照会に対して回答をしないことが述べられているだけであった。信義則違反である。
民事訴訟法第224条の規定に準じ、照会内容について、原告の主張する次の事実を真実と認めることが相当である。アメリカのディスカバリー制度でも、信義則に反する無回答に対しては制裁が課される。制裁が課されなければ、信義則の軽んじられる社会、不公正な人間社会となる。

ア、被告による電源使用制限は、特別な理由のない使用制限であったこと。事実の裏付けのない危険性を理由とする使用制限であったこと。
イ、 「事務に重大な影響を及ぼす危険」はないこと。
ウ、 原告は917日にノートPCとスキャナーのプラグをコンセントに接続した後、「裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の基本的取扱いの実施の細目について」の画面を見せたこと。その後もプラグを抜くことなく1時間以上経過したこと。機器の安全は確認されたこと。
エ、          107日の開示日にもコンセントに接続したこと。小坂氏が抜くまでに何ら障害は発生しなかったこと。
その後、持参のバッテリーで機器を使用したが、何ら問題は発生せず、機器の正常が確認されたこと。

12. 以上のとおり、本件電子メモのための電源の使用妨害は、法律条例の規定に従ってなされたものといえず、禁止の理由が事実の根拠を欠き、平等原則に違反し、社会通念上合理性を欠くものであり、職権濫用である。
13. 被告の恣意的な電源コンセントの使用制限が正当化されるならば、日本国中の自治体の情報公開手続きにおいて、同様の行為が蔓延することになる。それにより、國民は車用の重いバッテリーを何個も持ち運び、バッテリーが切れれば日を改めて再開示を求めなければならないことになる。高度情報ネットワーク社会形成基本法の目指す社会に逆行する社会となる。公共の不利益は甚大である。全体の奉仕者である公務員が、國民に対してそのような不便を強いることはあってはならないことである。

6.日向市行政評価委員会による外部評価
平成 14 年度に行政評価制度を導入し、その職員の行った内部評価の客観性及び公正性を確保するため、平成 15 年度に学識経験者、公益的な市民活動に取り組む団体に所属する者、公募市民に より構成された第三者評価機関である「日向市行政評価委員会」を設置し外部評価を行います。 職員が行っている内部評価に、行政評価委員会による外部評価が加わることにより、より客観的で、市民にとって分かりやすい行政評価になるよう取り組んでいます。評価結果については、「日向市行政評価委員会報告書」として取りまとめ、市長へ提出するとともに市民情報室、図書館、各地区公民館、市ホームページ等で公表しています。
http://www.city.hyuga.miyazaki.jp/office/kaigiroku/25/01/04_gaiyou.pdf

市民的及び政治的権利に関する國際規約 第19
1 すべての者は、干渉されることなく意見を持つ権利を有する。
2 すべての者は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、國境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。
3 2の権利の行使には、特別の義務及び責任を伴う。したがって、この権利の行使については、一定の制限を課すことができる。ただし、その制限は、法律によって定められ、かつ、次の目的のために必要とされるものに限る
(a) 他の者の権利又は信用の尊重
(b) 國の安全、公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護

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すべての者は、法律の前に平等であり、いかなる差別もなしに法律による平等の保護を受ける權利を有する。このため、法律は、あらゆる差別を禁止し及び人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位等のいかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護をすべての者に保障する。

憲法 第三十一条  何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

<憲法第31条の解釈について>
「憲法」 伊藤正己(元最高裁判事)著 第三版 弘文堂   より引用

329頁
「手続き的保障の意義」
以下にみるように、憲法は、とくに人身の自由にかかわる手続きについて詳しい規定をおいている。
それは国家が勝手気ままに自由を制限することを防止するためには、制限の手続きをあらかじめはっきり定めておく必要があるという、歴史的体験から得られた考え方による。アメリカの偉大な法律家の一人、フランクファーターは、「人間の自由の歴史は、その多くが手続き的保障の遵守の歴史である」と語ったが、その言葉は手続き的保障の意義をよく表している。
日本国憲法は、31条で手続き的保障の原則を定め、さらに刑事手続きに関する詳しい規定を設けている。国家が刑罰權をもち、その発動の過程で人々の自由が侵害、制限されるのであるから、手続き的保障が刑事手続きについて重視されるのは当然である。
しかし現代国家は、刑罰權の発動だけでなく、行政權行使の過程で、国民生活と多様な関わりを持つようになっており、そこでは刑事手続きの保障とは程度の差はあっても、それにおけると同じ趣旨が生かされるべきであるという要請が存在している。

332頁
適法手続き
(1)         法律の定める手続き
「法律の定める手続き」という言葉には広い意味がこめられている。
すなわち、人權制約の手続きだけでなく、実体も法律で定められること、および人權制約の内容が手続きと実体の両面にわたって適正でなければならないことである。
このように理解するのは、31条が、刑事裁判上の規定としての役割だけでなく、人身の自由全体、さらに人權保障全体にかかわる原則を定めたものととらえることによる。この原則を適法手続きの原則とか法廷手続きの原則と呼ぶ。
この原則は、個別の自由や權利の保障規定にも生かされているが、それらの規定によってとらえることのできない問題―たとえば後述の告知、聴聞の手続き―が生じたとき31条の原則のもとで処理されることになる。
またこの原則が広い内容を対象としていることから、31条の「生命」「自由」「刑罰」といった文言についても刑事法上の狭い意味に限ることなく、広く国家權力による国民の自由や權利への侵害・制約についても適用されると理解される。たとえば、財産權への制約や、少年法による保護処分、伝染病予防法による強制処分のほか、後述のように行政手続き上の諸問題についても適用の対象として考えてよい。

334頁
行政手続きの適正
適法手続きの原則は「法の支配」の原則からみて、行政手続きに対しても及ぶと解される(後略)


以上

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