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市民的及び政治的権利に関する国際規約第40条に基づく第2回報告
(仮 訳)
外務省国際連合局
人 権 難 民 課
人 権 難 民 課
第ー部: ー般的コメント
1.
19 47年に日本国憲法が施行され、 198 7年は施行40周年を迎えた.日本国憲法は、戦後40年の我が国国民の人権の擁護と促進に大きな役割を果たし、政治、経済、社会の発展に多大な貢献をなして来たが、憲法の基本的な理念及び精神は国民の間に深く定着してきている。
2.
憲法を最高法規とする我が国法体系における人権擁護の制度的側面については、第1回報告(CCPR/C/1Oノ Add. 1)第一部で概観したところであるが、その背景を若干敷街す‘れば次の通りである。
憲法における基本的人権尊重の考え方
(D 国民主権を基本原理とする我が国憲法は、平和主義と並んで基本的人権の尊重を重要な柱のひとつとしている。
1
によつて再び戦争の惨禍が起ることのt'tいやうにすることを決意し」た(同前文)結果証われたものである。平和のttいところに自由はttく、戦争と戦争の脅威がある限り人間の自由がないとの意味において、平和主義と基本的人権の尊重は密接な関係を有している。
(2) 憲法の保障する基本的人権は、 「現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」
(同第9 7条)が、基本的人権尊重の考え方は、 「すべて国民は、個人として尊重される」 (同第13条)との思想に端的に示されている。基本的人権には、①身体の自由、思想・言論の自由、及び信教の自由等のいわゆる自由権、 ②国民自らが国家権力の発動に参加する権能としての参政権、及ぴ③労働者が人間たるに値する生活を営むための動労権並びに国民が健康で文化的む最低限度の生活を営むための生存権等のいわゆる社会・経済権等が含まれている。特に、我が国の憲法は、
10箇条にわたり、刑事訴訟に関連した被告人及び被疑者の権利を保障しているが、 このことは、憲法
がいかに個人の人権を重視しているかを示す証左といえる。
(3) 憲法は、 「公共の福祉」により人権が制限され得る旨定めている(同第12条及び第13条)が、 この概念は、個人の基本的人権が平等に尊重されることを可能ならしめるために、基本的人権相互間の調整を図る内在的た制約理念として厳格に解釈されており、人権に不合理な制限を加えるものではない。
人権保障と統治機構
0) 我が国においては、立法、行政及び司法の三権は、国会、内閣及び裁判所に分属し、厳格な相互抑制の作用を通じ、人権擁護の面においても、遺漏なきを期している。
(2) 国会は、 「国権の最高機関」として、正当に選挙された国民の代表により構成され、 「唯一の立法機関」として立法権の行使を通じ、国民の権利と自由の擁護を図っている。内関(行政府)は、国会が制定した法律を誠実に施行することを通じ、同じく国民の権利と自由の擁護をはかっている(特に、行政
府にあって人権擁護を直接の目的としている人権擁護機関の仕組みは別添1.の通り)。更に、国民の権利が侵害された場合には、裁判による救済を受け得るが(憲法第32条は、 「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない」と定めている)、 憲法は、独立かつ公正な裁判を確保するため、裁判官に「その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘東される」
(同第7
6条第 3項)との立場を保障している。
3. 「市民的及び政治的権利に関する国際規約」の実施振り
我が国が本規約を批准して8年が経過したが、 この間、本規約は、国民の人権意識を一層高揚させるために重要な役割を果たして来た。上記に概観した我が国の人権保障制度の下では、本規約の適用にあたり、制度上困難な問題はないと認められるが、
もとより、いかをる国においても人権擁護の面において全く問題がないということはあり得ftい。国民が、 「過去幾多の試錬に堪へ、 現在及び将来の国民に対し、侵すこ とのできftい永久の権利として信託された基木的人権を擁護するために不断
の努力を払う」 (憲法第12条及び第97条)との固い決意を有している我が国においては、今後とも「人権擁護」の目的達成に向けて引き続いての努力が積み重ねられていくであろう。
第ニ部: 規約の各条に対する逐条報告
第I条
人民が外部からのいかかる干渉も受けずに、自らの政治的将来を選択する権利は、国際社会により尊重されてきているところであるが、我が国が、国連憲章及び本条に基づく人民自決の権利を一貫して認めてきていることは、第I 回報告に述べた通りである。我が国は、人民自決の権利の普遍的か実現と植民地の早期独立を支持するとともに、国際社会における人民自決の権利の完全な実現のために努力を払ってきている。
第2条
1. 「個人の尊厳」を重視する憲法は、第14条第1項において、 「すべて国民は、 ・・・・人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、
・・‘・差別されない」と規定し、 法の下の平等を保障している。
r)L. 「法の下の平等」は、立法府、行政府及び司法府のいずれをも拘東する原則であるが、 それは、 「生命、 自由及び幸福追求に対する国民の権利」のー部と しても、立法その他国政の上で最大の尊重を必‘要とする(憲法第
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13条)と解され、 また、公務員等に対し憲法擁護義務を課す(同第99条)等によっても、最大限の配慮が施されている。
3. 外国人の権利について付言すれば、基本的人権尊重及ぴ国際協調主義を基本理念とする憲法の精神に照らし、
参政権等性質上自国民のみを対象としている権利を除き、その享有は保障されている。
4, 本条第3項で言及されている救済措置は、第1回報告第1部及ぴ本報告で述べられているとおりである。
第3条
1 我が国は、 男女平等の実現をー層促進するため、 198 5年に雇用における男女の均等な機会及ぴ待遇の確保を目的とした「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律」を制定するとともに、男女の均等な機会及ぴ待遇を実現する見地から、労働基準法、船員法等の女子保護規定を一部改正した。また、公務においても人事院規則の改正により女子の職域拡大のための所要の措置がとられた。
これらの国内法令の整備を行う とともに、 19 8 5 年に「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する
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条約」を批准した。
2. 我が国は19 7 5年に開催された国際婦人年世界会議の決定事項を取り入れて、 19 7 7年に策定された「国内行動計画」に沿って婦人が男性と等しく政治、教育、
労働、健康、家族生活等に関して憲法が保障する一切の国民的権利を享受し、かつ、国民生活のあらゆる領域への男女両性の参加、貢献を実現するための社会環境づくりのための施策を展開してきた。
3. 「国連婦人の十年」後も、婦人に関する施策の推進体制を存続、拡充し、
「国連婦人の十年」最終年である 1985年に開催された「国連婦人の十年」ナイロビ世界会議における決定事項の国内施策への取入れ、及び 「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」の実施に伴う施策その他の婦人に関する施策についての総合的な対策の推進を図ることとし、
19 8 7年5 月、 「西暦2000年に向けての新国内行動計画」を策定した。 (詳細については、 「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」第18条に基づいて我が国が提出した第I回報告 (CEDAW/C/5/Add .48 )参照)
第4条
緊急事態を想定した法令には、基本的人権を制約する規定は何らおかれていない。我が国においては、緊急事態が発生した場合には、必要に応じ、憲法及び本規約に従った措置が講ぜられることとなろう。
第5条 ー
(1)我が国は、いかなる意味においても、本規約において認められる権利及び自由を破壊し、又は、本規約に規定する範囲を越えてこれらを制限するように本規約の規定を解釈することはなく、
また、 (2)我が国において、本規約が言及していない権利につき、右に言及されていないことを口実としてその権利を侵すことはできないことは、第I 回報告で述べた通りである。
第6条
1, 生命に対する権利に関する法的枠組については、第1 回報告で述べた通りである。
2‘ 我が国における死刑の適用は、極めて厳格かつ慎重に行われている。 19 81年から19 8 5年までの5年間に死刑が適用され判決が確定した者は、合計10名(年平均2名)に過ぎず、 しかも、 いずれも残虐な殺人事件
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や強盗殺人事件に限られている。現状においては、極度に凶悪な犯罪を犯した者に対し、死刑の適用を存置すべきであるとするのが、現在の我が国民の大多数の意見であり、
これは、幾つかの世論調査によって裏付けられている。
死刑確定者数
年 次
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総 数
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1981年
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3I132
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198
2年
198 3年 198 4年 |
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198 5年
|
注: 検察統計年報による。
3. 死刑の言渡し及び執行並びに特赦・減刑に関する我が
国の法制については、第1回報告で述べたとおりである
が、更に、以下の二点を付加する。
国の法制については、第1回報告で述べたとおりである
が、更に、以下の二点を付加する。
我が国の法制上、独立の裁判所による公平な審理、 無罪の推定、弁護の保障及び上級の裁判所による再審理など手続上の保障が十分に確保されていることは、
第1回報告及び本報告において、本規約第14条に関連して述べられているとおりであり、右保障は、死刑を言渡す裁判にも当然適用がある。
I 0
死刑確定者の処遇
(D 我が国の刑法第11条第2項は、死刑の言渡しを受けた者はその執行に至るまでこれを監獄に拘置する旨規定している。この拘置は、死刑の執行のために法律で定められた身体の拘東であって、
死刑判決という裁判4うー執行としてなされるものである。 この拘置がなされている間は、刑の時効は進行しない。
(2) 死刑の判決が確定した者は、死刑の執行に至るまで、拘置所又は刑務所の拘置区に、他の被収容者とは分離した特別の区域に収容される。死刑確定者は、おおむね未決拘禁者に準じた処遇を受けている。
また、 その心情の安定に資するため、希望により教謁師に‘よる宗教教証及び篤志面接委員による助言・指導も行われている。
第7条
I. 拷問等の禁止に関する法的枠組については、第1回報告で述べたとおりであるが、詳述すると以下のとおりである。
憲法第13条は、 「すべ、て国民は、個人として尊重さ
れる。生命、自由及ぴ幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他国政の上で、最大の尊重を必要とする」としており、同第3 6 条は、 「公務員による拷問及び残膚な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」とし、 また、同第38条第1項は、 「何人も、 自己に不利益な供述を強要されない」と定めている。
刑法は、 (1)公務員が職権を濫用して他人に義務のないことをさせたり、権利を妨害したとき、
(2)裁判・検察・警察の職員が職権を濫用して人を逮捕し又は監禁したとき、及び(3)裁判・検察・警察・行刑等の職員が刑事被告人、法令により拘禁されている者に対し、暴行、 陵虐行為を行ったときは、それぞれ懲役又は禁鋼に処する旨定めている(同法第19 3rs19 5条)。 また、 これらの罪については、検察官の不起訴処分に不服のある―定の者が、裁判所にその審判に付することを請求し、 裁判所がこの請求を認めて審判に付する決定をしたときは、公訴の提起があったものとみなされ、裁判所の指定した弁護士が公訴の維持にあたるとの趣旨をもりこんだ特別刑事手続(準起訴手続)をもうけて、右処罰を保障
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している(刑事訴訟法第2
6 2条以下)。
更に、憲法第38条第2項は、 「強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、 これを証拠とすることができない」とし、
また、刑事訴訟法は、右のような証拠はもとより、その他任意にされたものではない疑いのある自白は、証拠とすることができないこととして、 このような行為が行われることのないように証拠法の面からも保障している
(同法第319条第1項)。
2. 拷問の禁止については、上述のとおり憲法第3 6条に規定されているが、警察職員の研修において、憲法は必修のカリキュラムに組まれており、その中で十分に、教育が行われている。
3. 刑事拘禁施設における人権侵害の防止及び救済については、第10条についての本報告の中で述べる。
第8条
1. 奴隷的拘東及び犯罪による処罰を除いた苦役からの自由並びに児童の酷使の禁止等の法的枠組については、第
I回報告で述べたとおりであるが、詳述すると以下のとおりである。
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憲法第18条は、 「何人も、いかなる奴隷的拘東も受けない」と規定し、奴隷的拘東からの自由を明文により認め、人を奴隷的拘東の状態に置くことを禁止している。また、同第27条第3項は、 「児童は、 これを酷使してはならない」と規定し、児童の酷使を禁止している。
そして、憲法のこれらの各条項の趣旨を受けて、刑法は、人身売買又は被売者等の国外移送を行った者及び脅迫、暴行を用いて人に義務なきことを行わせるいわゆる強要行為を行った者をそれぞれ懲役に処する旨定めている(同法第2 2 6条第2項、第223条)。
また、労働基準法は、強制労働を禁止し、労働者の酷使を禁止している(同法第5条、第69条第1項)。
更に、売春防止法は、困惑、脅迫等による売春、売春をさせる契約、及びいわゆる管理売春を禁止し、 それぞれ懲役刑ないし罰金刑を定めている(同法第7条、第 10条、第12条)。
また、職業安定法は、監禁等を手段とする職業紹介、
労働者の募集、供給を禁止し、懲役刑ないし罰金刑を定めている(同法第6 3条)。児童福祉法は、児童の人身
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売買事件などを防止する趣旨から、他人の児童をー定期間同居させる場合は、届出を要することとされている (同法第30条)。
そして違法に身体の自由を拘東されている者は、人身保護法により救済を求めることができ、 また、人を奴隷とするような私人間の法律行為は、民法第90条により無効とされる。
2, 我が国には、本規約第8条第3項(b) に規定されている「強制労働」を伴った拘禁刑に相当する刑罰として、 刑法第12条に規定する懲役及び同第18条に規定する労役場留置がある。
第9条
身体の自由及び安全に関する法的枠組については、第I 回報告で述べたとおりであるが、若干の項について詳述すると以下のとおりである。
】. 第1項については、憲法第31条は、 「何人も、法律の定める手続によらなければ、 その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」、同第3 3 条は、 「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、月つ理由となつて.3;
1 5
る犯罪を明示する令状によらかければ、逮捕されかい」 同第3 4条は、 「何人も、理由を直ちに告げられ、且っ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられかければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、
直ちに本人及ぴその弁護人の出席する公開の法廷で示されかければならない」とそれぞれ規定しており、 これを受けて刑事訴訟法等の法律が逮捕、勾引、勾留等の要件、手続を定めている。
(1) このほか、自由剥奪の措置として、 「出入国管理及ぴ難民認定法」 (注)に基づく退去強制令書又は収容令書による外国人の収容、少年法による観護措置、逃亡犯罪人引渡法による拘禁、売春防止法による補導処分、犯罪者予防更生法による引致又は留置、執行猶予者保護観察法による引致又は留置、伝染病予防法による伝染病患者の強制収容・隔離、麻薬取締法による麻薬中毒患者の入院措置、精神衛生法による自傷他害のおそれのある精神障害者の入院措置など身柄の拘束をともなう行政措置及び精神衛生法上の同意入院等があるが、
これらはすべて、理由及び手続を定めた法律に
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基づくものである。
(2) なお、精神障害者等に対する適正な精神医療及び保護を実施するにあたって、精神障害者等の人権にー層の配慮を加えるとの観点から、精神障害者本人の意思によらない精神病院への入院の要否判定等、人権に+分配慮を必要とする精神科医療を行うものとしての精神保健指定医制度の導入や精神障害者の入院の要否及び処遇の適否に関する審査を行うための審査機関(精神医療審査会)の設置等を内容とした精神衛生法改正案が1987年9月国会で可決、成立した(「精神保健法」に名称を変更)。
2. 第5項の権利については、憲法第17条は、 「何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、
その賠償を求めることができる」と規定し、 これを受けて国家賠償法が制定されている。同法は、 「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、
故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、 国又は公共団体が、 これを賠償する責に任ずる」 (同法第I条第1項)と規定し、公権力の行使に当たる
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公務員の職務執行の際の故意又は過失により違法に逮捕・抑留された者は、同規定に基づき国又は公共団体に対しその損害の賠償を請求できる。
(1) なお、抑留又は拘禁が違法でなかった場合についても、憲法第40条は、 「何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる」と規定し、
この憲法の規定を受けて、刑事補償法が制定されている。同法は、無罪の裁判を受けた者につき、未決の抑留又は拘禁による補償(同法第1条第1項)と刑の執行及び拘置による補償(同条第2項)を定めており、その場合における補償金額は、同法の定める制限内で裁判所が決定することとされている(同法第4 条)。
(2) また、右憲法第4
0条は、抑留、拘禁された後不起訴処分になった者についてまで、補償を義務付けているものではないが、不起訴処分になった場合であっても、結果的に無実の者が抑留、拘禁されたため被った財産的、身体的、精神的不利益の重大さにかんがみるときは、
これに対する補償を行うことが憲法第4
0条
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の趣旨に沿い、かつ、正義と衡平の観念に合致すると考えられるところから、被疑者補償規程(昭和3 2年 4月12日法務省訓令第1号)が設けられている。同規程によれば、不起訴処分になった者につき、その者が罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な理由がある場合に、抑留又は拘禁による補償を行うこととされている(同規程第2条)。
(注: 第1回報告の中で引用されている「出入国管理令」は、我が国の難民条約及び議定書への加入に伴なう国内法整備のー環として、ー部改正が行なわれ (1981年)、名称も「出入国管理及び難民認定法 」と改められた。)
第10条
1. 木条に関連する法的枠組みは、第1回報告で述べたとおりであり、被拘禁者は、人道的に、かっ、人間固有の尊厳を尊重するよう扱われているが、刑事拘禁施設における被拘禁者の人権侵害の防止及び救済の制度について、更に敷衛すれば次の通りである。
監督・査察制度
行政内部的監察制度とし,て、法務大臣が命じた職員
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による「巡聞」 (監獄法第4条第I項)と中間監督機関である矯正管区による管区監察とがある。巡閲は、 各行刑施設について、少なくとも2年ごとにI回行うこととなっており、管区監察も、ほぼ同じ頻度で行われている。また、裁判官及び検察官は、刑の執行状況を確認すると ともに、 その職務上のー参考に資するため、行刑施設を巡視することができる(監獄法第4条第2項)。
不服申立制度
在監者が監獄の処置に対し不服があるときは、法務大臣又は巡閲官に対し情願を行うことが出来る(監獄法第7条)ほか、所長面接制度(監獄法施行規則第9 条)も苦情処理の機能を果たしている。
情願は、大臣に対しては書面で、巡閲官に対しては書面又は口頭で行うが、いずれも秘密の申出が保障されている。 また、所長面接制度も、代理者による面接実施を含め、活発に運用されている。
このほか、民事訴訟、行政訴訟、告訴、告発、人権侵犯申告等の手段の利用も可能である。
家族、弁護人との接見交通
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未決拘禁者については、職員の立会いかしに弁護人又は弁護人となろうとする者と面会することが認められている(刑事訴訟法第3 9条)。その他の者との面会については、職員が立ち会うが、刑事訴訟法の規定に基づいて面会等が禁止される場合を除けば、面会の相手方に制限はなく、 まーた、未決拘禁の目的に反せず、かつ、施設の管理上支障のfccい限り、その内容についても制限されることはない。
受刑者については、面会の相手方は、原則として、 親族に限られ、その他の者との間では、特に必要が認められる場合にのみ許されることとfccっている(監獄法第45条第2項)が、行刑の実際においては、本人の処遇上有益と判断される場合には、積極的に許可するなど弾力的に運用されている。面会には、原則として、職員が立ち会うが、処遇上その他必要があると認められる場合には、立会いを行わない措置もとられている。
なお、監獄法は、 19 0 8年に制定されたものであり、政府は、最近における刑事政策思想の発展の状況に鑑みて、刑事施設の被収容者のより適切な処遇を行
2 1
うため、受刑者について、その資質及ぴ環境に応じた計画的な処遇を行うこととし、受刑者の改善更生のための効果的な処遇方法を導入する等を目的として、監獄法を全面改正する刑事施設法案に取り組んでいるところである。
また、政府は、都道府県警察が管理運営する留置施設における被留置者の処遇に関する規定を整備する等を目的として、留置施設法案にも取り組んでいるところである。
2. 第2項(b) について若干敷衛すれば次の通り。
少年法において、少年被告人は、他の被疑者、被告人と分離して、 なるべく、その接触を避けなければならず、 また、少年に対する被告事件は、審理に妨げのない限り、他の被告事件から手続を分離しなければならないとされており(同法第49条第1、 2項)、 また、少年被告人に対しては、やむを得ない場合でなければ、勾留状を発付することはできないものとされ、勾留する場合においても、少年鑑別所に拘禁することができるものとされ(同法第48条第1、 2項)、 また、拘置監に少年を勾留する場合には、成人と分離して収容するものとさ
2 2
れている(同法第49条第3項)。
更に、少年被疑者等公訴提起前の少年についても、少年被告人と同様、勾留は例外的処分とされ、身柄拘束が必要な場合は、原則として少年鑑別所に収容する措置をとるこ
ととされている(同法第17条、第43条、第 44条)。
また、少年の被告事件についても、刑事訴訟法第1条に従い、迅速な裁判が行われることとされている。
3. 第3項についての法的枠組についても、第1回報告の当該バラを参照ありたいが、我が国の行刑施設における受刑者処遇の基調は、刑の執行を通じて矯正処遇を行い、受刑者の改善更生及ぴ社会復帰を図ることにおかれている。更に、我が国の行刑制度につき敷街を行えば次の通り。
分類処遇制度
右目的の実現を図るたるめには、個々の受刑者の持
つ人格特性及び環境的・社会的諸問題に対応した処遇を行う必要から、個々の受刑者の持つ問題点を明らかにするための科学的調査を行い、 その結果に基づいて処遇計画を立て、
その計画を効果的に実施するための
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集団を編成して、各集団に応じた有効な処遇を行っている。
累進処遇制度
刑の執行の過程に数個の段階を設け、行刑成績に応じて順次上級に進級させ、それにつれて漸進的に優遇の付与及ぴ自由制限の緩和を行って社会生活に近づけるとともに、共同生活における責任を加重することにより、受刑者の自発的な改善努力を促し、社会適応化を図ろうとする処遇方法をとっている。
開放的処遇
受刑者の自律心及び責任感に対する信頼を基礎とした処遇形態であり、開放的処遇に適する受刑者(交通事犯等)を対象として処遇している。
刑務作業
刑務作業は、受刑者の改善更生及び社会復帰を図るための重要な処遇のーつであり、受刑者の勤労意欲のかん養、職業的技能及び知識の習得、忍耐心・集中力の養成を図ることなどを目的として行われている。刑務作業の形態は、その性質・目的から、生産作業、職業訓練及び自営作業に分かれており、
その業種は、木
I,44
エ、印刷、洋裁、金属、革工等20余種に及び、受刑者は、各人の適性等に応じ適当な莱種に指定され就業している。
少年犯罪者の処遇
懲役又は禁鋼の言渡しを受けた少年に対しては、その特性に鑑み、少年刑務所又は刑務所内の特に設けた場所でその刑を執行する。
この場合、少年が20才に達しても引き続き同一場所において処遇することが適当であると認められるときは、 2 6才に達するまではそこでの執行を継続することが出来ることとなっている。
少年刑務所においては、少年受刑者のほかに、 26 歳未満の青年受刑者を収容しており、 それぞれに適正な処遇集団を編成し、処遇の充実を期している。青少年受刑者の処遇については、特に、職業訓練、教科教育及び生活指導に重点がおかれているが、
これらの実施に当たっては、地域社会の人々からも多くの協力を受けている。
職業訓練は、少年刑務所における重点的処遇のーつであり、 出所後の自立更生に資することを目標として、特に積極的に実施されている。
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第11条
契約上の義務の不履行は、民事上の責任を生ずるにとどまり、第1回報告で述べたとおり、右不履行が犯罪とされることはなく、従って何人もこれを理由として拘禁されない。
第12条
1.
第1回報告で述べたとおり、憲法第2 2条により居住・移転の自由及び外国移住の自由を保障されている。
また、 自国に戻る権利については、憲法に明文の規定はないが、当然に保障されていると解されている。
2. 上記憲法の規定を受け、出入国の管理一般を目的とする「出入国管理及び難民認定法」は、日本人の出国及び帰国について、 出国、 帰国に際しての確認の手続(出国、帰国の印を旅券に押す手続)を規定しているにとどまり(同法第60条、第61条)、出国及び帰国を制限している規定は他に存しない。
他方、同法は、外国人の出国については、重大な犯罪を犯し、訴追され又は逮捕状が発せられている者などを除き、出国の確認の手続を規定しjているにとどまり (同
2 6
法第2 5条、第2 5条の2)、外国人の出国を制限する規定は他に存しない。
3‘ 本条の権利に対する制限としては、以下の制限があるが、いずれも本条第3項の規定に合致する必要最少限のものである。
(1) 保釈又は勾留執行停止ざれた場合の刑事被告人の住居制限(刑事訴訟法第93条、第9
5条)
(2) 仮上陸、特例上陸等の許可を受けた者の住居及び行動範囲の制限(出入国管理及び難民認定法第13条第 3項、第14条第3項、第15条第4項、第16条第 3項、第18条第4項、第54条第2項)
(3)
刑事事件で訴追を受サている者等の旅券発給制限 (旅券法第13条)
(4)
伝染病患者の収容・隔離(伝染病予防法第7条、第
8条)
第13条
1.
外国人の追放は、 「出入国管理及び難民認定法」第 24条に基づき、同条項の退去強制事由に合致した場合に限り行われる。
2. 同法第24条に定める退去強制事由としては、非合法
2 7
滞在者としての不法入国者(同条第1号)、不法上陸者 (第2号、第3号)、仮上陸条件違反者(第5号)及び不法残留者(第4号ロ、第6号、第7号)が掲記されている他、合法在留中の者で退去が強制されるものとして、在留条件違反者(第4号イ)、刑罰法令違反者(同号一、、 ト、チ、 リ)、売春関係業務従事者(同号ヌ)、 不法入国・不法上陸割助者(同号ル)、暴力主義的破壊活動を行う等我が国の憲法秩序を乱す者(同号オ、ワ、
カ)及び我が国の利益、公安を害する活動を行ったと法務大臣が認定した者(同号ョ)が掲げられている。
3. 退去強制手続においては、入国審査官の審査(同法第 4 5条)により退去強制事由に該当すると認定された容疑者は、特別審理官の口頭審理(同法第48条)の請求ができ、更に、特別審理官の判定に対して法務大臣への異議申出を行うことができるとされている(同法第49 条)。 また、上記口頭審理において、特別審理官の面前で、容疑者に弁解、防禦の機会が与えられ、代理人による手続も認められている。 (同法第48条)
第14条
1. 本条に関する我が国における法的枠組は、第1回報告
2 8
で述べたとおりであるが、若干の項について詳述する。
2. 第2項の無罪の推定については、我が国の憲法、刑事訴訟法等の現行法令上明文の規定は存しないが、刑事裁判の基本原理とされており、現実に刑事裁判は、
この原理を基礎として行われており、検察官が、公訴事実について挙証責任を負い、裁判官は合理的に疑いを容れない程度に証明されたと認める場合にのみ有罪の判決を宜告している。この関連で、
「疑わしきは被告人の利益に」 との法格言に示された原則は、充分に尊重されている。
0ii. 第-S項の各サブバラグラフに言及されている保障については、以下のとおりである。
(a)号については、被疑者が逮捕された場合には、 逮捕又は検察官への身柄送致等の際の弁解録取の手続において、更に、勾留の請求が行われた際には、勾留尋問の手続において、被疑事実の要旨が告知されることとされており
(刑事訴訟法第2
0 3条第I項、第 2
0 4条第1項、第2
0 5条第I項、第61条、第 20
7条第1項)、 これら被疑事実の要旨を告知するに際し、被疑者が国語を理解しないときは、通訳の援
2 9
助を受ける。
また、被告人については、公訴提起後遅滞なく起訴状の膳本が被告人に送達され(同法第271条),、公判における起訴状朗読の際、国語を理解しない被告人のために裁判所は、通訳を付すこととされている。
(b)号については、刑事訴訟法は、公訴提起があったときは、遅滞なく起訴状の膳本を被告人に送達すべきことを裁判所に義務づけており(同法第271条第 I項)、 また、第I回の公判期日と被告人に対する召喚状の送達との問には、裁判所の規則で定める猶予期間を置かなければならないと規定し(同法第2 7 5 条)、これを受けて刑事訴訟規則は、被告人に対する第I回の公判期日の召喚状の送達は、起訴状の謄本を送達する前には、 これをするこ とができないとし、第 1回の公判期日と被告人に対する召喚状の送達との間には、少く とも5日の猶予期問を置かなければなならないと定めている(同規則第17 9条第I項及び第2 項)。このように被告人は、すみやかに起訴状の送達を受けるので、いかなる犯罪事実により訴追されているかを知ることができ、 また、第I回公判期日までに
3 0
最低5日以上の期間があるので+分防禦の準備をすることができるようになっている。次に、刑事訴訟法は、検察官に対し証拠申請する証人等の氏名、住居を相手方に知る機会を与えること及び証拠書類、証拠物の事前開示を義務づけ(同法第299条第I項)、刑事訴訟規則は、 この開示等をなるべくすみやかに行うように規定しており (同規則第17 8条の6及び 7)、 これにより被告人及びその弁護人は、検察官申請証拠を第1回公判期日前に検討することができるようになっている。 したがって、我が国内法上、被告人の防禦のための+分な時問及び便益は+分に保障されている。
刑事訴訟法は、 「身体の拘東を受けている被告人又は被疑者は、一弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と立会人なく して接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる」
(同法第3 9条第I項)と規定し、被告人とその弁護人との自由な接見交通を認めており、我が国内法上、被告人とその弁護人との連絡は+分に行えるようになっている。
3 1
(c)号については、憲法第3 7条は、被告人は、裁判所の迅速な裁判を受けることを保障しており、 また、最高裁判所は、個々の事件についても、現実に右の保障に明らかに反し、審理の著しい遅延の結果迅速な裁判を受ける被告人の権利が害せられたと認められる異常な事態が生じたときは、判決で免訴の言渡しをすべきものとして、被告人が不当に遅延することなく裁判を受ける権利を保障している。
Cd)号の被告人が自ら裁判に出席する権利については、刑事訴訟法は、 これを認めているのみならず、軽撒事件(同法第284条、第28 5条)又は被告人が出頭を拒否する等その権利を放棄した場合(同法第 28 6条の2)のほかは、被告人が公判期日に出頭しないときは、開廷することができないとして(同法第 286条)、被告人が自ら出席して裁判を受ける権利を+分に保障している。なお、同法第28 6条の2に規定する場合においても、被告人が自ら進んで公判に出席しよう とする限り出席が認められるのであるから、裁判に出席する権利は保障されているものである。
3 2
また、 (d)号の弁護人を付される権利については、 刑事訴訟法で、犯罪が重大な場合に、すかわち、死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁固にあたる事件の公判期日に弁護人がいないとき、又は弁護人がいても出頭しないときには、裁判長が弁護人を附し、審理に立ち会わせる旨規定し(同法第289 条)、 また、被告人の弁護の能力が劣っている場合、 すかわち、被告人が未成年者であるとき、年令7 0才以上の者であるとき、耳の聞こえかい者又は口のきけかい者であるとき、心神喪失者又は心神耗弱者である疑があるとき、 その他必要があると認めるときには、 裁判所は、職権によって弁護人を附することができる旨規定している(同法第3 7条)。後者の場合、公判期日に弁護人が出頭しなかった場合も同様である(同法第29 0条)。
(e)号については、憲法第3
7条第2項は、 「刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する」と規定しており、
これを受けて刑事訴訟法は、証人尋問における被告人又は
3 3
弁護人の立会権を認め(同法第157条)、被告人又は弁護人が証人に対し反対尋問をすることができる旨定めている(同法第304条、刑事訴訟規則第199
条の2ないし5)。更に、刑事訴訟法第320条以下は、特定の例外を除き、伝聞証拠の証拠能力を否定している.したがって、被告人の反対尋問権は+分に保障されている。
次に、刑事訴訟法は、検察官、被告人又は弁護人が、証拠調を請求できる旨規定しており (同法第 298条)、その際、検察官と被告人、弁護人との間に何らの差異も設けていない。 したがって、被告人が、自己に不利な証人と同じ条件で自己のための証人の出席及び尋問を求めることができることになっている。
(f)号については、刑事訴訟法は、 「国語に通じない者に陳述をさせる場合には、通訳人に通訳をさせなければならない」 (同法第17 5条)と規定し、 「耳の聞えない者又は口のきけない者に陳述をさせる場合には、通訳人に通訳をさせることができる」 (同法第 17 6条)と規定し、 「国語でない文字又は符号は、
3 4
これを翻訳させることができる」 (同法第17 7条) と規定している。
(g)号については、憲法第3 6条は、公務員による拷問を禁止し、 また、同第38条は、第1項で、 「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」と規定して不利益供述の強要を禁止し、第2項で、 「強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、 これを証拠とすることができない」と規定して、強制、拷問、脅迫等による自白の証拠能力を否定している。そして、刑事訴訟法は、
警察官、検察官、裁判官等に供述拒否権の告知を義務づけ(同法第198条第2項、第2 91条第2項)、 また、被告人の供述拒否権を明記し(同法第311条第1項)、憲法第3 8条第2項に規定する自白はもとより、 その他任意にされたものでない疑いのある自白も証拠とするこ
とができない旨規定して(同法第 319条第1項)、かかる自白の証拠能力を否定している。 このように手続法及び証拠法の面からも、第
14条第3項(g) は十分担保されている。
4. 第4項については、少年法は、少年の被告人は、他の
3 5
被告人と分離し、なるべく接触を避けかければからかい旨(同法第49条第1項)、少年に対する被告事件は、 他の被告事件と関連する場合にも、審理に妨げない限り、その手続を分離しなければむらない旨(同法第49 条第2項)、少年に対する刑事事件の審理は、第9条に従って、行わむければむらない旨(同法第50条)、少年事件の調査は、たるべく、少年、保護者又は関係人の行状、経歴、素質、環境等について、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的智識特に少年鑑別所の鑑別の結果を活用して行うように努めなければftらない旨 (同法第9条)それぞれ規定し、 また、刑事訴訟法規則は、 「少年事件の審理については、懇切を旨とし、且つ、事案の真相を明らかにするため、家庭裁判所の取り調べた証拠は、
つとめてこれを取り調べるようにしftければむらない」と規定している(同規則第27 7条)。 更に、家裁の審判や起訴された少年については、氏名、 年令等その者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載することも禁止されている(少年法第61条)。 このように、我が国内法は、少年事件の手続につき特則
3 6
を設ける等種々の配慮を加えて少年の健全な育成を図っており、第14条第4項は+分担保されている。
5. 第5項については、刑事訴訟法によれば、被告人は、 上訴権を有し(同法第3 51条)、第ー審の判決に対し高等裁判所に控訴して再審査を受けることができる(同法第3 7 2条、裁判所法第t 6条)。控訴理由は、事実誤認(刑事訴訟法第3 8 2条)、量刑不当(同法第 381条)、法令の適用の誤(同法第380条)、訴訟手続の法令違反(同法第379条)等を含み、本条第5 項が要求する被告人の権利は、+分担保されている。更にすすんで、刑事訴訟法は、憲法違反、判例違反を理由とする最高裁判所への上告を認めている(同法第40 5 条以下)。
B. 第B項については、有罪の言渡しをした確定判決に対しては、無罪等の裁判を言渡すべき明らかな証拠が新たに発見されたとき、 その他一定の事由(刑事訴訟法第 43 5条)があるときは、有罪の言渡しを受けた者、検察官等は、再審の請求を行うこ とができることとされ (同法第4 39条)、その請求に理由があるときは、再審開始決定が行われ(同法第4 48条)、裁判所は、そ
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の審級に従い更に審判を行い有罪、無罪その他の裁判を行うこととなる(同法第451条)。
憲法第40条は、 「何人も、抑留又は拘禁された後、 無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる」と規定し、 この憲法の規定を受けて、刑事補償法が申」定されている。
同法は、無罪の裁判を受けた者につき、未決の抑留又は拘禁による補償(同法第I条第1項)と刑の執行及ぴ拘置による補償(同条第2項)を定めており、その場合における補償金額は、同法の定める制限内で裁判所が決定することとされている(同法第4条)。
憲法第17条は、 「何人も、公務員の不法行為により、 損害を受けたと きは、 法律の定めるところにより、国又は公共団体に、 その賠償を求めることができる」と規定し、
これを受けて国家賠償法が制定されており、 「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、 その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、
これを賠償する責に任ずる」 (同法第1条第I項)と規定しており、警察官、検察官、裁判官の職務執行の際の故意又
3 8
は過失により違法に訴追され、有罪の言渡しを受けて刑に服した者は、同規定に基づき国又は公共団体に対しその損害の賠償を請求できる。
7. 第7項については、憲法第3 9条により「ー事不再理の原則」を保障している。
この憲法の規定に従い、刑事訴訟法は、同一犯罪について既に確定判決を経たときは、判決で免訴の言渡をしなければならないと し(同法第3 3 7条第1号)、 また、不利益再審を禁止している(同法第43 5条、第4 3 6条、第45 2条)。
3 9
第15条
第1回報告で述べたとおり、憲法第31条は、罪刑法定主義を定め、第3 9条において、遡及処罰の禁止を規定し、本条の権利を保障している。
第16条
憲法第13条(前段)は、 「すべて国民は、個人として尊重される」として、本規約第16条の趣旨を明言し、また、憲法第11条は、 「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない」 と している。加えて、憲法第13条 (後段)は、 「生命、 自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と規定し、国民のあらゆる法律生活において、個人の権利が最大限に尊重される必要がある旨を確認し、
さらに、同第3 2条において、 「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない」としノ、最終的には、司法的救済手段による個人の権利の確保が保障される。
第17条
本条に規定された権利の保護に関する法的枠組は、第 1回報告関連部分で述べたとおりであるが、主要点を敷谷i
4 0
すれば以下のとおりである。
1‘ 憲法は、 「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜査及び押収を受けることのない権利は、
正当な理由に基いて発せられ、且っ捜索する場所及ぴ押収する物を明示する令状がなければ、侵されない」 (同第3 5条第1項)と規定し、すべての人の住居等に対する公権力による不当な干渉を禁止している。また、刑法は、故なく住居などに侵入することを禁止し (同法第13 0条)、軽犯罪法は、正当な理由なしに他人の住居等をのぞき見ることを禁止(同法第I条第23
号)している。さらに、医師、弁護士等、業務上他人の秘密を知りうる職にあるものについては、各種法律において秘密保持などの義務(刑法第13 4条、刑事訴訟法第14
9条、 民事訴訟法第2
31条第1項第2号)が課せられ、個人の私生活の平穏に対する配慮が払われているほか、国家公務員及び地方公務員にも守秘義務が課せられており (国家公務員法第10 0条、地方公務員法第 3
4条)、 これによって、個人情報が保護されている。
2. 名誉・信用の保護については以下のとおり。
(1) 刑法は、公然事実を摘示し、人の名誉を致損するこ
4 1
とを処罰し、死者の名誉についても、謹岡することを処罰の対象としている(同法第230条)。
(2)人の信用を段損することは、刑法で処罰の対象とされている(同法第233条)。
(3)更に、個人の名誉・信用が、段損された場合、その損害については、精神的損害に対する賠償(民法第 710条)として救済を受けうる他、原状回復を求めうる(同第723条)。
3. 通信に対する干渉の禁止については、憲法第21条第 2項で、通信の秘密が保障されている他、郵便法及び電気通信事業法には、憲法の趣旨を受けてこれを保障し、 さらに関係業務に従事するものが、通信に関して職務上知りえた秘密を守る義務を有する旨の定めがおかれている。
4.
なお、近時、 「私生活をみだりに公開されない権利」 としてのいわゆる「プライバシー権」の名において、 肖像権、及び人の名誉・信用に係る過去をみだりに知られない権利等が法的保護の対象とされつつある。
第18条
1.
第1回報告で述べたとおり、憲法第19条、第20
4 2
条、及び第21条第1項が、思想・良心の自由、信教の自由及ぴ表現の自由を規定し、 また、同第14条が、 思 想・信条による差別を禁じており、本条の実施は確保されている。
2. 特に、本条第2項については、憲法第20条第2項が、 「何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない」と規定している他、同条第 I項及び第3項等が国家の非宗教性を規定し、国及びその機関による宗教的活動を禁止している。
3. なお、教育基本法第9条第I項において、 「宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない」と規定し、私立学校による宗教教育や家庭における宗教教育が認められている。
第19条
1. 第1回報告で述べたとおり、憲法第19条、第21条及び第23条により保障されており、特に、本条第2項に言及されている表現の自由は、憲法第21条により保障され、民主主義の維持に不可欠のものとして最大限尊重されている。
4 3
2. 他方、表現の自由は、内心の自由とは異なり本質的に社会性を帯びていることから、例えば、以下の制限が課されているが、いずれも本条第3項の規定に合致する必要最少限のものである。
(1)
わいせっ文書の頒布の禁止(刑法第17 5条)
(2)
他人の名誉の段損、侮辱の禁止て刑法第230条以
下)
(3)
内乱、外患誘致又は外患援助のせん動の禁止(破壊活動防止法第38条第2項第2号)
(4) 義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保 (義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法第3条、第4条)
(5)選挙運動のために使用する文書、図画に関するー定の規制(公職選挙法第14 2条以下)
(6)医薬品等の虚偽、誇大広告の禁止(薬事法)、屋外広告物の制限(屋外広告物法)等
3. なお、我が国における放送に関しては、放送法においてこれを公共の福祉に適合するよう規制し、その健全な発達を図ることと し、放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、
又は規律
4 4
されることがない(同法第1条、第3条)旨規定されている。 また、選挙に際し、政見放送等が公平に行われることを確保するための規定が、公職選挙法に設けられている(同法第150条、第151条)。
第20条
1. 第1項については、我が国は、国民の間に戦争に対する極めて強い否定的感情が存在しており、戦争宣伝が実際に行われることがほとんど考えられないとの状況にあることは、第I回報告の通りであり、審査以降変っておらず、将来仮に、戦争宣伝行為による弊害の危険性が生じることとなれば、必要に応じ、表現の自由に十分配慮しつつ立法措置を検討することとなろう。
2. 第2項についても、第I回報告の通り、現行法制により規制しえない具体的な弊害が生じる場合には、公共の福祉を害しない限度において表現の自由に十分配慮しつつ、さらに立法措置を検討することとしている。
第21条
第1回報告で述べたとおり、本条に規定された権利は、 憲法第21条第1項により保障されており、 また、右権利に対する制限(破壊活動防止法第3条及び伝染病予防法第
4 5
19条第1項第3号等)も、本条に合致した必要最少限のものとなっている。
第22条
I. 本条に規定する権利については、第1回報告で述べたとおり、憲法第21条第1項、第28条のほか、労働組合法、国営企業労働関係法等の国内法により保障されている。
2. なお、本条に規定する権利については、上記国内法令による保障に加え、我が国は、 ILOの強制労働の廃止に関する条約(第29号)、団結権及び団体交渉権条約 (第98号)及び結社の自由及び団結権の保護条約(第 8 7号)をそれぞれ19 3 2年、 19 5 3年及び19 6 5年に締結し、誠実に遵守しているところであり、本規約第2 2条第3項に言及された義務の履行も確保されている。
第23条
1. 家族は、国民生活の基本秩序に重要なかかわり合いを有するものとして、国内法上本条に即した保護を受けている。
2. 憲法第2 4条は、 (1)婚姻は、両性の合意のみに基い
4 6
て成立すること、 (2)婚姻は、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により維持されねばならないこと及び(3)婚姻及び家族等に関する法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されねばならないことを定めている。本規約第2項に関連しては、 男女とも一定の年齢に達した者の婚姻の権利が認められている(民法第7 31条)。
3. 同第4項に関する国内法令の概略は次の通りであり、 本項に即した措置がとられている。
婚姻中の措置として、
法定財産制(すなわち、婚姻費用の分担(民法第 7 6 0条)、 日常家事債務の連帯責任(同第7 61 条)、特有及び共有財産(同第7
62条))及び子の監護・教育(同第818条、 820条)に関する規定がある。
婚姻の解消(離婚)の際の措置としては、
(1) 財産分与の規定(同第7
68条)がある他、有責配偶者による損害賠償及び婚姻解消後の生活の維持の必要性等を勘案した措置がとられる。
(2〕 了に関する措置と しては、親権者の指定に関する
4 7
諸規定(同第819条第1項、第2項、第3項、第 5項)がある。
4. 家庭内の争いについては、事柄の性格に即した取扱いがなされるよう家庭裁判所が設けられている。
第24条
1. 本条第1項に言及されている権利については、憲法は、第14条の法の下の平等の定めにより、児童に限らず、すべて国民は、人種、信条、性別、社会的身分又は門地による差別なく、個人としてその人権をあまねく保障されており、特に、児童の権利については、
同第27条第3項において、児童の酷使を禁止し、 また、同第26条は、すべて国民は、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負うとし、更に、義務教育の無償制度を保障している。
第1項に言及される家族、社会、国家を通じた児童の権利の保障に関し、我が国でとられている措置の概略は次の通り。
福祉面
(1) 児童福祉法は「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、 児童を心身ともに健やかに育成
4 8
する責任を負う」 (同法第2条)との基本的考え方をかかげている。
(2)
家族の保護、児童の養育のための諸手当の支給。
(児童手当法、児童扶養手当法、児童福祉法等)
(3)
母性の保護のための諸措置。
(母子保健法、児童福祉法、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律、労働基準法、健康保険法、母子及び寡婦福祉法等)
(4)
児童の監護のための特別措置。
(少年法:非行少年に対する特別措置、児童福祉法:児童の福祉措置、保障並びに関連施設の設置等)
(5)
搾取、遺棄及び虐待等からの児童の保護 (刑法、労働基準法、児童福祉法)
(6)
児童及び年少者の労働の規制
(労働基準法、風俗営業等の規制及び業務の適
正化等に関する法律等)
4 9
教育面
教育基本法は、憲法の趣旨を体し、 「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底」することを使命として(同前文)、諸般の定めをおいている、本規約第24条第I項に関しては、同法を基本に次の諸規定が定められている。
(1) 教育の機会均等(教育基本法第3条)
(2) g年間の普通教育の義務教育制及びその間の国公立学校での授業料免除(教育基木法第4条、学校教育法第6条、第22条、第3
9条)
(3)社会教育の奨励(教育基本法第7条、社会教育法第3条)
(4)経済的理由により就学困難な学齢児童の保護者への援助給付(学校教育法第2 5条、第4 0条等)
(5)心身障害を有する者に対する障害の状態に応じた教育(学校教育法第22条、第3 9条、第7 4 条等)
5 0
2, 本条第2項に関しては、全て子は、場合に応じ父母或いは父または母の氏を称し(民法第790条)、出生届により命名の効力を生じ、父母或いは父又は母の戸籍に入る(戸籍法第18条)。
3. 本条第3項が規定する児童の国籍取得については、国籍法第2条に右に沿った規定が設けられている。
第2 5条
1. 我が国における本条関係の法的枠組については、第1 回報告で述べた通りであるが、敷衛すれば次の通り。
国民主権主義を基本原理のーつとしている我が国憲法は、公務員の選定・罷免は、国民固有の権利である(第 15条第I項)としている。国会両院の議員の選挙(第 43条)、地方公共団体の長及びその議会の議員などの選挙(第9 3条)並びに最高裁判所裁判官の任命に係る国民審査(第7 9条)は、国民による選定又は罷免権が直接的に行使される場合であり、 また、かかる選挙の際の成年者による普通選挙・秘密投票の原則が憲法第15 条第3項及び第4項によって定められている。
2. 我が国公職選挙法は、憲法の精神に則り、国会両院の議員及び地方公共団体の議会の議員並びに長の選挙につ
5 1
いて具体的に定めており、満20才以上の国民に選挙権が(同法第9条)、また、選挙の種類により満25才以
上あるいは3 0才以上の国民に被選挙権が保障される (同法第10条)とともに、各選挙につき1人1票制がとられる旨(同法第36条)規定され、また、投票の秘密については、何人も、選挙人の投票した被選挙人の氏名等を陳述する義務はない旨(同法第52条)定められている。
3. なお、国又は地方公共団体の公務に従事する職員に関する国家公務員法(第3 3条)及び地方公務員法(第 15条)は、能力の実証に基づいて職員の任命を行う旨の第25条(C) に則した規定を置いている。
第2 6条
1. 法の下の平等は、個人の尊厳を基本理念のーつとする憲法により、すべての国民に保障されている(第14条第1項)他、第1回報告本条関連部分でのべた関連法規によっても保障されている。
2. 加えて、憲法は、第25条第I項において、 「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障し、同条第
2項は、 「国は、 すべての生活部面について、社会福
5 2
祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」として国の責務を規定し、 また、同第26 条は、国民の「ひとしく教育を受ける権利」を保障し、 義務教育を無償としている他、同第27条及び第28条は「動労の権利」を保障する等、実質的にも、平等かつ効果的な保護が図られるよう配慮を加えている。
上記憲法の理念を受け、政府は、国民が平等かつ効果的な保護を享受できるよう、生活部面では、社会保障、 社会福祉の諸制度の充実を図るとともに、就中、社会的に弱い立場にある障害者、老人、児童等に対する社会福祉の向上を図っている。
教育についても、経済的地位による差別のない教育の機会均等を定め(教育基本法第3条第1項)、経済的理由により就学困難と認められる学齢児童の保護者に対しては必要な援助を行い(学校教育法第2 5条、第40条等)、国民が等しく教育を受けるよう保障している。
労働面についても、使用者の差別的取扱いを禁止しており (労働基準法第3条)、 また、雇用対策法、職業安定法等に基づく措置により、労働者の能力と意欲に応じた雇用機会が確保されるよう努ナ!している。
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また、歴史的、社会的理由により生活環境等の安定向上が阻害されている同和地区住民に対しても、生活環境の改善、産業の振興、職業の安定、教育の充実、人権擁護活動の強化、社会福祉の増進等を目的とする特別な事業措置を講ずることにより、地区住民の生活の安定、福祉の向上を図っている。
第27条
我が国においては、自己の文化を享有し、自己の宗教を実践し、又は自己の言語を使用する何人の権利も否定されていない。
本条との関係で提起されたアイヌの人々の問題については、 これらの人々は、独自の宗教及び言語を保存し、 また独自の文化を保持していると認められる一方において、憲法の下での平等を保障された国民として上記権利の享有を否定されていない。
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人権擁護委員
人権擁護委員とは、人権擁護活動を行うことを任務とした民間のボランティアである。
この制度は、地域住民の中から人格識見のすぐれた人を選び、その協力を得て、国民の日常生活に接しつつ、人権を擁護していくことが望ましいという考え方から、設けられた。
人権擁護委員には、各市町村の住民の中で人権擁護業務に最もふさわしい人が、法務大臣から委嘱されて就任する。委嘱については、次のように民主的で慎重な手続きが定められている。
0) 市区町村長が市区町村議会の意見を聞き、その住民の中から、人格識見が高く、広く社会の実績に通じ、人権擁護について深い理解のある人を候補者として推薦する。
(2) 法務大臣は、上記候補者について、更に、弁護士会及び都道府県人権擁護委員連合会に意見を求めた上、委嘱する。
従って、人権擁護委員は、 あらゆる分野から選ばれ、 1987年1月1日現在約1万1. 5 00名が全国にわたって配置されている。
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2. 人権擁護機関の活動
人権思想の普及高揚
人権思想の普及高揚を図るため、人権擁護局関係職
員と人権擁護委員は、ー体となって、協力している。
(1) 一般的な啓発活動
一般の人々を対象にして行われるもので講演会・座談会・討論会・映画会等の開催、テレビ・ラジオ等の放送、新聞発表、広報紙への掲載、バンフレット・リーフレッ
トなどの印刷物の配布、ボスター・懸垂幕・横断幕‘立看板の掲示、広報車による巡回、作品展示会等いろいろの方法が採られている。
「人権モデル地区」活動もそのーつである。 これは、毎年、全国から約20市区町村を「人権モデ)レ地区」として選び、当該市区町村の区域内で模範的な人権擁護活動を積極的に行い、 その地域で培われた人権尊重の精神を次第に全国に及ぼそうというもので、市区町村関係者を始め、地域の人々の協力を得て、活発7"啓発活動を展開している。
(2) 個別的な啓発活動
人権侵犯事件の調査・処理や人権相談等具体的な
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人権問題の解決を通じ、特定の個人を対象として行われる。
このように、人権思想の啓発活動は多種多様な方法で実施されているが、特に、毎年12月10日の 「人権デー」を最終日とする1週問においては、 これを「人権週問」と名付け、大規模な啓発活動を展開している。また、全国人権擁護委員連合会は、人権擁護委員法が施行された日(19 4 9年6月1 日)を記念して、 この日を「人権擁護委員の日」と定め、 198 2年から毎年その日に、全国的な人権啓発活動を展開している。
人権相談
人権相談所は、法務局・地方法務局又はその支局で開設(常設相談所)しているほか、デバート、公民館等で臨時に開設(特別相談所)
して、法務局職員や人権擁護委員が相談に応じている。 また、人権擁護委員は、 自宅でも相談に応じている。
相談は無料で難しい手続きは不要であり、相談の内容については秘密が厳守されている。
これまでの人権相談の内容を見ると、家庭内のトラ
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ブル(離婚、相統、扶養等)や隣近所のもめごと、 借地借家の問題等、非常に幅広く相談が持ち込まれている。
これらの相談は年を追って増加しており、 19
8 6年には、約3 9万2千件もの相談を取り扱っている。 このうち人権擁護委員が、取り扱った件数は、約15万8千件である、
相談を受けた法務局職員や人権擁護委員は、権利を守るために必要な手続きを助言し、その問題を取り扱う関係官公署を紹介するなど、それぞれの場合に応じて問題の手助けを行っている。
人権侵犯事件の調査・処理
人権擁護機関は、人権侵犯の疑いのある事案について、侵犯事実の有無を確かめ、 その結果に基づき、事案に対する適切な処置を講じるとともに、関係者に人権思想を啓発し、もって人権の擁護を図っている。
人権擁護機関が取り扱う人権侵犯事件の人権侵犯とは、広く 「憲法の基本原則である人権尊重の理念に反する行為」として取り扱われており、必ずしも法律や命令に違反した行為だけに限らない。
なお、人権侵犯行為が3'り事又は民事の訴訟事件の対
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象となる場合は、裁判所、検察庁、警察等によって処理されるべきものであり、原則として人権擁護機関は介入していない。侵犯事件の取り扱い件数は、
1986年には、約1万5千件となっている。
事件の調査の結果、現に人権侵害の状態が継続している事件では、なによりも第1に、そういう状態を排除して、被害者を救済するための措置を講じ、既に人権侵害が行われてしまった事件では、侵害した本人やその人を指導・監督している者に対し、文書やロ頭で反省を促して善処を求め、また、将来行政上の改善措置を必要とすると思われる事件では、関係官庁へその旨通知する。
法律扶助
貧困のため民事裁判を遂行できない人々 (在日外国人を含む。)のために、弁護士報酬等を含めて、訴訟の費用を全部立替える制度が設けられている。実際の業務は、財団法人法律扶助協会に行わせているが、人権擁護局が国庫から補助金を受けてこれに支出し、業務を監督している。
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別添2
人権侵害の場合の救済措置としての刑事訴訟手続の概要
1. 人権侵害行為が犯罪に該当するときは、刑事訴訟法に従い、告訴又は告発をすることができる。つまり、同法第
2 3 0条は「犯罪により害を被つた者は、告訴をすることができる」 と規定し、同法第231条は被害者の法定代理人及び親族の告訴権について規定し、同法第239条1項は「何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる」と規定している。
ところで、我が国刑事訴訟法は、国家訴追主義を採用レ、同法第247条において「公訴は、検察官がこれを行う」と規定しており、いわゆる私人訴追は認めていないところ、公訴権の実行に関し民意を反映させてその適正を図るため、検察審査会により検察官の不起訴処分の適否を審査する等の制度が設けられており、告訴・告発をした者又は犯罪の被害者等は右の審査の申立てをすることができる
(検察審査会法)。
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また、刑事訴訟法は、第2 62条以下において、公務員職権濫用罪、特別公務員職権濫用罪、特別公務員暴行陵虐罪(刑法193条乃至19 6条)等については、検察官の不起訴処分に不服のある一定の者が、裁判所にその審判に付することを請求し、裁判所がこの請求を認めて審判に付することを決定したときは、公訴の提起があったものとみなし、裁判所の指定した弁護士が公訴の維持にあたるという特別刑事手続(準起訴手続)をもうけており、告訴又は告発をした者は右の付審判請求をすることができる。
2, 刑事上の罪に問われて逮捕勾留された場合の救済措置については、憲法第34条後段は、 「何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、
その理由は、直ちに本人及び弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない」と規定し、不法拘禁に対する保障を規定しており、刑事訴訟法は、第8 2条乃至第87条、第20 7条I 項において勾留理由の開示及び勾留の取消しの手続を詳細に規定している。さらに同法は、第4 2 9条I項2号、第 419条及び第43 3条1項において、勾留に関して行った裁判所の決定に対する準抗告、抗告及び特別抗告の手続を規定しており、 これらの規定により、勾留理由の開示及
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ぴ勾留の取消しを請求することができる。
3. 有罪等の判決を受けた場合については、被告人は、上訴権を有し(刑事訴訟法3 51条)、事実誤認、量刑不当、法令の適用の誤、訴訟手続の法令違反等の理由により (37 7条乃至384条)、第一審の判決に対し高等裁判所に控訴することができ、更に、高等裁判所の判決に対しては、憲法違反、判例違反を理由に、最高裁判所に上告することができる。
判決以外の裁判(主に、判決に至る過程において手続の進行に関連して生ずる事項に対する裁判)に対しては、刑事訴訟法第419条以下の規定に従い、抗告、準抗告、特別抗告等をすることができる。
4 有罪の言渡しをした確定判決に対しては、無罪等の裁判を言い渡すべき明らかな証拠が新たに発見されたとき、その他一定の事由(刑事訴訟法43 5条)があるときは、有罪の言渡しを受けた者等は、再審の請求を行うことができる(同法43 9条)。そして、その請求が理由があるときは再審開始決定が行われ(同法448条)、裁判所が審判をして、有罪、無罪その他の裁判を行うことになる。
S 少年に対する保護処分の決定については、 少年法の抗告、再抗告に関する規定(同法3 2条以下)に従って、 不服を申立て、 是正を求めることができる。
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